神奈川県南足柄市に山頂をおく矢倉岳は、箱根外輪山に属しています。足柄道を通る旅人を監視する櫓のようにそびえているため、その名が付いたそうです。標高は870mと高くはありませんが、山頂からは富士山や箱根の山、足柄平野などのパノラマが望めます。
国道246号線~県道726号線~県道78号線で地蔵堂近くの駐車場に到着。
駐車場から足柄峠経由で、矢倉岳を目指します。
足柄峠までは足柄古道の石畳や広葉樹の森を進みます。
足柄古道は、現在は県道78号線でところどころ遮断されていますが、京都の大和朝廷から板東(関東)への官道で、1000年も昔からいにしえの人達が歩いた道です。倭建命(やまとたけるのみこと)も峠を越えたといわれることから、明神ヶ岳越えの古道よりも古いのではないかとも言われています。弘法大師、豊臣秀吉や多くの武将達、松尾芭蕉も歩いた古道のようです。
車道と足柄古道を交互に歩き、金時山の山頂が望める見晴台に出ると足柄峠はもうすぐです。
足柄峠には関所跡があり、「足柄の関は足柄坂に出没する強盗団を取り締まるために昌泰2年(899)に設けられた。通行には相模の国の国司が発行する通行手形が必要だった。鎌倉時代に箱根道が開かれるまでは、官道・公道として利用され、東海道最大の難所として有名であった。また歌枕として関、峠ともに多くの歌に詠まれている」と立札に記されています。
近くには、旅人が手をついてお辞儀をし手形を置いたという「おじぎ石」や、関所破りを犯した罪人がさらし首にされた「首供養塚」という怖い場所もあり、歴史というよりもその時代を想像させられます。また、道路を挟んで建っている日本三大聖天堂といわれる足柄山聖天堂は「その昔、小田原のばあ様が足柄山聖天尊に家人に下の世話をかけずに大往生したいと祈願したところ、願いが叶った。それ以来、老若男女を問わず『下』の安穏の為、参詣に来られるという」事を後で知り、もっとちゃんとお参りしてくれば良かったと思いました。
矢倉岳への登山口は車道を少し戻ります。その途中に足柄明神の赤い鳥居が建っていて、その奥には足柄明神跡がひっそりと残っています。倭建命に討たれた足柄明神ですが、足柄の人達にとっては東国を守るために立ち向かった「坂の神:足柄明神」は、坂東人(関東地方の人)のために戦った英雄なのです。
そこからは矢倉岳や金時山が望めます。
峠付近は足柄峠が万葉集に詠われている事から足柄万葉公園として整備されています。矢倉岳への表示を確認しながらさらに戻り、車道横についている矢倉岳入口から登り始めます。
赤松や桧の林を進み、分岐(山伏平近く)から矢倉岳へ進みます。富士山にススキの穂やマユミの実が装飾を施してる様な、美しい光景も時々見られます。
矢倉岳山頂からのパノラマです。
矢倉岳山頂は、広々とした平地です。山頂からの眺めは素晴らしく、富士山や箱根の山々、相模湾まで見渡せます。
帰りは清水越えまで戻り、杉林の急坂を内川までいっきに下ります。道はしっかりとついていますが、鉄塔も目印になります。内川を渡って少し登り返し、矢倉沢林道との分岐を右に進み、茶畑を下って県道78号線に出ると、地蔵堂はもうすぐです。
駐車場に戻り、車で夕日の滝に立ち寄ります。
夕日の滝は、酒匂川の支流内川上流にかかる落差23m、幅5mの滝で金太郎が産湯をつかった滝と伝え られています。夕日の滝の名称は、夕日に映える美しさから名づけられたと言われてい ますが、毎年1月半ばに夕日が滝口に沈むところからつけられたとも言われています。